11月の機械受注は過去最大の減少幅

国内民間設備投資の先行指標である船舶・電力を除く民需（コア機械受注）は、昨年11月に前月比で２カ月連続減少し、過去最大の下げ幅を記録した。
世界経済が同時減速する中、輸出依存度の高い日本経済は製造業を中心に直撃を受けており、企業の設備投資意欲が冷え込んでいる。
内閣府は基調判断について「大幅に減少している」とし、判断を３カ月ぶりに下方修正した。

内閣府が15日発表した機械受注統計によると、11月のコア機械受注（季節調整済み）は前月比16.2％減で、総額は7542億円となった。
比較可能な1987 年４月以降で過去最大の減少幅となり、総額も87年７月以来の低水準となった。
前年同月比では27.7％減。

機械受注は各企業が設備用機械をメーカーに発注する段階で集計するため、実際の設備投資に半年程度先行するとされる。
世界的な需要減退を背景とした生産・設備の抑制は、企業による非正規労働者の解雇を通じて雇用情勢を悪化させている。
雇用情勢の悪化は個人消費にも下押し圧力になっている。

大和住銀投信投資顧問の大中道康浩チーフエコノミストは、「世界同時不況という流れの中で、企業の設備投資の先送り、または取りやめといった動きが顕著に出てきた」と述べ、「９月のリーマン・ショック以前から原油高を受けて企業の設備投資に変調の兆しが出てきたが、リーマン・ショック以後、さらにその動きが加速して出てきた」と語った。

家電世界最大手のパナソニックは９日、世界的な景気悪化で薄型テレビの需要が見通しを下回っていることから、プラズマと液晶パネルの両新工場への 2012年までの投資額を従来計画より23％減額して4450億円にすることを決めた。
また、トヨタ自動車は６日、自動車販売が低迷するなか、国内の全12工場で、２、３月に計11日間、操業を休止すると発表している。

11月のコア機械受注の内訳は、製造業が前月比33.2％減と過去最大の下げ幅となった。
非製造業は同0.5％増だった。
機械受注の関連指標である11月の工作機械受注額の内需は前年同月比60.5％減と、10月の同42.1％減からマイナス幅が急拡大した。

マネックス証券の村上尚己チーフエコノミストは、製造業の受注減について「異常な落ち込みを示した。赤字決算を余儀なくされる輸出企業を中心に、設備投資需要が急速に落ち込んでいることをあらためて確認する結果となった」と指摘した。

村上氏はその上で、「輸出減速だけではなく、企業業績悪化を背景とした設備投資失速が成長率を押し下げている」とし、09年度は「かつて金融危機に見舞われた1998年度（実質ＧＤＰは前年度比1.5％減）と同様の厳しい落ち込みとなるリスクが高まっていると言わざるを得ない」との厳しい見方を示した。

民需で減少要因となった業種は、製造業では、新聞・出版、食品などを含むその他製造業、化学、造船、電気、自動車などで、非鉄金属、繊維業などは受注増に寄与した。
非製造業では、卸・小売り、不動産などを含むその他非製造などが減少要因となる一方、金融・保険、通信業などはプラスに寄与した。

昨年７－９月期は季節調整済み前期比10.4％減と、1998年４－６月期と並ぶ過去最大の減少幅を記録した。
内閣府が昨年９月末時点で調査した主な機械製造業者の10－12月期受注見通しは前期比1.2％増となっていた。
11月が大幅減となったことで、10－12月に２四半期連続のマイナスとなることは必至で、また四半期ベースで過去最大の下げ幅を更新する可能性が高い。

内閣府の杉原茂景気統計部長は記者説明で、見通しの前期比1.2％増を達成するためには、12月にかつて記録したことがない前月比66.6％上昇が必要だと説明し、12月が前月比横ばいでも10－12月期は前期比16.2％減となるとの試算を示した。

農林中金総合研究所の南武志主任研究員は、「08年秋以降の世界的な需要の落ち込みは異常とも言える勢いであり、いまだそれらが底入れする時期が見えていない状況だ」と指摘。
南氏は、機械受注の水準（３カ月移動平均）としては、すでに「失われた10年」における「景気の谷」のところまで落ちているとした上で、「調整の場が製造業から非製造業へ移るのであれば、設備投資の減少傾向は09年前半中も継続する可能性は強いだろう」との見方を示している。

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